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ご主人さまがおなくなりになる1ヶ月前のことでございました。
「ユマー!」
私の朝は小さき主人の声から始まります。
「おはよう、ユマ」
起床の音声コマンドにより、私は充電機能のある台座から起き上がります。機体が軋むことなく滑らかに動くのは、小さき主人がこまめにメンテナンスをしてくれるからです。
「おはようございます。ハルナさま」
画像認識処理により、私の回路が小さき主人の表情を分析し始めます。
「昨日も夜遅くまで起きていましたね。顔にくまができていますよ」
「バレたー! だって、奈美ちゃんとのメッセ終わらなかったんだもん」
ナミという人名にユーザ情報が照合されます。川崎奈美さん。小さき主人のご友人で走るのが得意な明るい女の子です。
「ニムさんに報告します。長期的に寝不足になるようでしたら、通信機能を制御させていただきます」
「ダメだめ! 秘密にしてー! ニムはお仕置き機能ついてるんだから」
奈美さん付きのアンドロイドであるニムさんは、最新型の家庭教師タイプです。勉強だけでなく躾と言われる約束を破った時のペナルティを与える役割もこなしています。
「情報に鍵をかけるには、管理者のパスワードが必要ですが、ハルナさまはお持ちではないため対応できません」
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