4.心に茨を持つ少年(The Boy With The Thorn In His Side / The Smiths)

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 むしろ、学生時代やフリーター時代に家庭教師のバイトをしていたことがある昴の方が、よっぽど人に教えたり人の上に立ったりするのが得意なのだ。  だと言うのに、いつも誰かの指導や学級委員のような人の上に立つ役割は、かれんの方に回って来る。  まあ、あの「いつでもどこでもマイペース」な昴に頼まない人の気持ちもわからなくもないが……。  かれんも最初は断ろうとも思うのだが、せっかく自分を頼って来たのに断るのは悪いと思ってしまい、つい引き受けてしまう。  その度にかれんは緊張したり、「こんな感じで良いんだろうか?」と手探り状態で、いつもの努力と頑張りでやってみるのだが、大抵は「加賀谷さん、さすがですね!」と手放しで褒められる。 (――「さすがですね」って、私、そんなにすごくないのに)  自分は何とか努力して頑張って、やっとできるのだ。  あの、何でも「サクッ」と出来る昴に比べれば、全然すごくない……。 「――加賀谷先輩、どうしたんですか?」  真人に不思議そうに話しかけられて、かれんはハッと我に返った。 「ううん、何でもない。――じゃあ、会社戻ろうか? 私、今日も早めに帰らないといけないし」  かれんは誤魔化すように真人の方を向いて笑顔を見せたが、ふと真人の肩ごしの向こうにいる女の子が目に留まった。  あの女の子、この間も見たことがある、とかれんは思った。
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