4.心に茨を持つ少年(The Boy With The Thorn In His Side / The Smiths)

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4.心に茨を持つ少年(The Boy With The Thorn In His Side / The Smiths)

「いやーっ! やっぱり加賀谷(かがや)先輩のクロージング、すごいですよねー。超尊敬しますよ!」  後輩の塩木真人(しおきまこと)に言われると、かれんは「それ程でもないけど」という表情をした。 「別に、そんなにすごくもないけど……」  かれんが言うと、真人は首を横に振った。 「いやいや、加賀谷先輩はすごいですよ! まあ、この間まで一緒に回っていた野辺部長もすごかったけど、何て言うか、加賀谷先輩は鮮やかなんですよね、話の切り替えしとかが。お客さんが何言って来ても、ちゃんとすごい返して来るじゃないですか。  部長も加賀谷先輩のこと『あいつは度胸があるよな』って言ってましたし」  度胸か……。  かれんは心の中で呟くと、ため息を吐いた。  後輩の真人や部長の野辺に褒められたのは嬉しいが、別に自分にはそんなに度胸もないのに、とかれんは思った。  真人が褒めてくれた、さっきのお客さんとのクロージングだってそうだ。  初めて会うお客さんだから結構緊張してドキドキしていた。あんな感じで良かったのだろうかと思っていたが、意外なほどすんなりと契約が取れて、かれん自身が驚いてしまったほどだった。  かれんは最近、後輩の塩木真人に自分の担当のお客さんの引継ぎをしている。  新人の真人はこの間まで野辺と一緒に新潟駅の周辺を営業していたが、そろそろ独り立ちすることになり、かれんが受け持っている万代のエリアも少し引き継ぐことになったのだ。  かれんは部長の野辺に、「引き継ぐついでに、あいつの指導もよろしくな!」と言われた。  かれんは小さい頃から優等生で、よく誰かに何かを教えることを頼まれたり、学級委員長みたいなものになったりしていたが、実は人に何かを教えたり人の上に立ったりするのがそこまで得意というわけではなかった。
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