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数日後。
田舎の友人である、川口が泊まりにきた。
東京観光に来たのだ。
特に案内も必要ないというので、宿だけ提供した。
川口が、帰る前日である。
俺の部屋で酒を飲み、二人とも、したたかに酔っていた。
「トイレ借りるぞ。」
川口は、トイレに行って帰ってくると、ベッドに蹴つまずいて派手に転んだ。
「おいおい、大丈夫か?」
「ああ。大丈夫だ。」
川口は、ヘラヘラして立ち上がる。
「おい!!手が!」
俺は、思わず叫ぶ。
川口の右手が肘の下から、なかった。
「あ、いけねえ。」
川口は、右手を拾うとペタっと付けた。
「????」
俺は、どんな顔をしていたのだろう。
俺は、酔っているのか?
「すまん、すまん。打ち所が、悪いとさ取れちゃうことあるのさ。」
川口は、ヘラヘラして言う。
「取れる???」
血は、全く出てなかった。
マネキンか何かの手みたいに、外れて、すぐついた。
よくみなかったが、表面は、ツルツルだったみたいだ。
「昔からか?」
「何が?」
「いや、その、手が取れるのがさ。」
「気がついたのは、5歳の頃だよ。子供ながらに言わない方がいいかなって、思っていて、誰にも言ってなかった。」
「懸命だな。」
「誰も友達で、手や足が外れるって言っている奴いないからな。」
「確かに、俺も外れないし、そんな奴は、聞いたことない。」
「あまり、自慢出来ることじゃないだろ?役に立たないし。」
そこで、酔っ払っていたものの、どうにか役に立つことがないか考えてみたが、何も浮かばなかった。
川口は、翌日、何事も無かったように帰って行った。
酔って覚えてないのかもしれないので、敢えて確認しなかった。
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