0人が本棚に入れています
本棚に追加
授業の帰り道、信号待ちをしながら、ふと思いついた。
古川と川口を会わせてみようか。
変わった能力を持っている同士、仲良くなるかもしれない。
そんなことを考えていた。
「森田さん、そりゃ、やめといた方がいいですよ。」
不意に後ろから声を掛けられた。
振り向くと見知らぬ青年が、立っている。
「え?俺に声かけた?」
何故、この人は、俺の名前を?
「古川さんと川口さんを会わせるのは、やめた方がいいですよ。余計なお節介です。」
え?俺の考えていることが、わかるのか?
「あ、すいません、勝手に。私人の考えていることが、読めるので。」
「あ、なるほど。」
三人目。
ここまでくると、慣れてきた。
なんだって、短期間に、こんなに特殊な能力に出会うのやら。
「私もね、人の心を読めるのを内緒にしていますから。嫌がられるでしょうから。普段は、なるべく壁を作って読まないようにしていますが。いま、気を抜いたら森田さんの考えを読んでしまって。」
「あ、そうなのですね。古川や川口も人には言ってないって言うし。」
「教えても、特に世界は変わりませんし、人々の日常も変わらないでしょ。変に思われて嫌われるくらいなら、黙っていた方がいい。そう言う人、沢山います。」
「え、沢山いる?」
古川や川口みたいな人が沢山いるのか?
「心読めちゃうと、たまにそう言う方にあいます。ほっておくことが、多いですけど。」
「みんな、隠して普通に生きているのか。」
「そうですね。だから、そっとしておいてあげてください。」
青年は、それだけ言うと去っていった。
青年の忠告どおり、二人の能力のことは、誰にも言わないでおくことにした。
そして、いつもの日常に戻った。
最初のコメントを投稿しよう!