1. 待てもできない

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 「終わった……」  ぐっと腕を上に突き上げ、大きく伸びをする。時間は、大体定時から二時間後か。ちらと和泉の机を見たが、既に居なかった。  戸塚の仕事が終わるのを待っていた隣の席の高田が、机の上に乗った資料の山を見ながら、苦笑いをした。 「お疲れ、戸塚。お前ほんとによくやるよ……」 「……好きでやってるわけじゃないんだけどな」 「お前頼みやすいというか、使いやすいというか……。その上仕事が早いから、皆ついついお前に回しちまうんだよな……」 「今日のこれは、"つい"とかでは無かったけどな」  戸塚は和泉から貰った紙束を指さして言った。 「ああ、和泉さんな」  高田はペラペラと紙をめくった。 「お前、色んな人に親切にし過ぎなんだよ。そんなんだから恋人にすぐ逃げられんだ」  戸塚春雪、28歳。容姿よし。性格よし。金もそこそこ持っている。そんな彼に、恋人ができない理由は二つだった。  ひとつは、皆に親切すぎるところ。もうひとつは__ 「もう少し仕事断れよな。それとも、Domってのは誰にでも世話焼きたくなんのか?」 「性別は関係ないだろ」 「どうだか。お前昔からそうだし」     
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