1. 待てもできない

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 「帰っていいよ、高田。お前の仕事じゃないんだし」  そう言うと、高田が驚いたようにぽかんと口を開けていた。仕方ないから手伝おうとしていた矢先の出来事に、高田は思わず、えっと洩らした。 「お前は?」  きかれて、戸塚はへらりと笑ってみせる。 「終わらせて帰るよ。俺の仕事のミスだし」 「いや、お前のじゃなくて、あの女の科のだろ。手伝うからさ」 「高田は家に奥さんいるだろ」  いいよ、と言ったら、困ったように眉を下げられた。 「いるけど、あいつ別に俺の事なんて待ってねぇよ。てか、お前は働きすぎ」 「いいって。帰れよ」 「でも、戸塚ばっかりそうやって損するのは」 「強情だなぁ。俺は好きでやってんだよ。帰れ帰れ」 「さっきと言ってること違ぇじゃん。お節介野郎」  戸塚は手をひらひらとしてみせた。申し訳なさそうに、高田がバッグを持ち上げる。 「……お前も早く帰れよ?」 「おー」 「じゃあな、戸塚。お疲れ」 「おー、お疲れ様」  戸塚が、チラチラこちらを見ながら部屋を去っていった。あいつも、自分のことを言えないくらいお節介野郎だと思う。  戸塚はもう一度パソコンと向かい合い、よしと言ってキーを叩き始めた。
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