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「帰っていいよ、高田。お前の仕事じゃないんだし」
そう言うと、高田が驚いたようにぽかんと口を開けていた。仕方ないから手伝おうとしていた矢先の出来事に、高田は思わず、えっと洩らした。
「お前は?」
きかれて、戸塚はへらりと笑ってみせる。
「終わらせて帰るよ。俺の仕事のミスだし」
「いや、お前のじゃなくて、あの女の科のだろ。手伝うからさ」
「高田は家に奥さんいるだろ」
いいよ、と言ったら、困ったように眉を下げられた。
「いるけど、あいつ別に俺の事なんて待ってねぇよ。てか、お前は働きすぎ」
「いいって。帰れよ」
「でも、戸塚ばっかりそうやって損するのは」
「強情だなぁ。俺は好きでやってんだよ。帰れ帰れ」
「さっきと言ってること違ぇじゃん。お節介野郎」
戸塚は手をひらひらとしてみせた。申し訳なさそうに、高田がバッグを持ち上げる。
「……お前も早く帰れよ?」
「おー」
「じゃあな、戸塚。お疲れ」
「おー、お疲れ様」
戸塚が、チラチラこちらを見ながら部屋を去っていった。あいつも、自分のことを言えないくらいお節介野郎だと思う。
戸塚はもう一度パソコンと向かい合い、よしと言ってキーを叩き始めた。
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