1. 待てもできない

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 いろいろ文句を言いつつも、やり始めてしまえば、どうってことない。仕事は早い方だし、嫌いじゃない。  カタカタと打ち込まれていく文字。残りはあと少しだ。これが終わったら何をしよう、とぼーっと考える。まずは飯だ。次に風呂に入って、明日の仕事の準備をして、それから寝よう。  生の快楽を感じない、何の変哲もない一日。 「よし、終わり」  ぐっと伸びをして、一気に立ち上がる。帰ろう。さすがにもう帰らせていただいても、バチは当たるまい。  廊下を一人、とぼとぼと歩く。眠たい。家に帰ったら、ベッドで眠ろう。……いや、この時間なら、ベッドはだめだ、起きられなくなってしまう。自分は朝に自信はない。  ふあ、と大きく欠伸をして、戸塚は目を擦った。とその時、戸塚のすぐ横のドアから、会社の中でもトップクラスに偉い男が、何かを叫びながら出てきた。突然の出来事に、戸塚はふらりと揺れる。 「……っと、と」  そんな戸塚には気付かなかったのか、荒ぶった様子で男はその場を去っていった。危ねぇな、と戸塚は悪態をつく。ちらりと扉の方を見ると、奥で何かが蠢いているのがわかった。  ……そういえば、あの男、ひどい性癖を持ったDomだという噂があった。 「大丈夫ですか」  自分には関係ないと思いつつも、放っておくことが出来ない。高田にお節介だと言われるのも、無理はないのかもしれない。 「っ、ぁっ……」  扉から中の様子をゆっくり覗く。呻いているのは、やはり人だ。身長は、自分と変わらないくらいか。とすれば、男のSub……。 「……とつか……?」  美しく、それでいて腹の立つ、聞きなれた声。戸塚はゴクリと生唾を飲んだ。
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