彼女の物語

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 図書館に誰かが入ってくるたびに優斗が入ってこないかなと期待を寄せる。しかし、彼が現れることはなかった。  彼が今どこで何をしているのか、私にはわからない。それは彼の自由だ。二次試験を控えているのはお互い同じだ。迷惑をかけたくないし、それで嫌われでもしたら私は勉強になんて集中できなくなる。  私が首都圏の大学ばかり受ける理由は、春からも優斗に会いたいからだ。  告白する勇気のない私は、せめて春以降も継続する関係が欲しいだけだ。  私にとって大学は、関東でも関西でもどこでもよかった。優斗が東京の大学を受けると言っていたから、私は関東に絞っただけだ。  さすがに優斗と同じ大学を受けるほど偏差値はなかったので、自分の身の丈にあった大学に願書を出した。  そんな志望動機だから、こんな時期になっても過去問すら自力で解けないのかもしれない。  二月が終われば、あっという間に春になる。  春まで二ヶ月、たった二ヶ月先の未来がどうなるのか、私には灰色にしか見えない。  もし不合格になったら、自分の高校三年間が否定されるみたいで怖い。    いや、優斗と会えなくなるのが、一番怖い。
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