1人が本棚に入れています
本棚に追加
遮断した世界
ここは雨の国。
青空は生まれて一度も見たことがない。
今日も学校、傘をさして登校。
イヤホンをして、世界を遮断。
傘は好きだ。
僕の顔を隠してくれる。
音楽も好きだ。
現実を忘れさせてくれる。
ウォークマンの中には、君の歌が入っている。
君が僕にくれた唯一のものだ。
1番から5番までをループするのが好き。
その中には君がみんなに宛てたインスト曲が入っている。
ラストの歌はアカペラらしいが、ひとりで聴いてと言われて、今も聴けずにいる。
それがポジティブでもネガティブでも、踏み込めずにいる。
君は今、難病と戦っている。
ガラス越しの君は、唇だけを動かして、なにか伝えたがっている。
だけど、君に無理はさせられなくて、お医者さんからも止められている。
届きそうで届かない。無力な自分が嫌いだ。
でも、ずっと逃げ続けることはできない。
君の手術が決まり、僕は決めた。
成功を祈り、聴いたよって言うために。
病院の屋上にフラッと来た僕は、入り口のドアに背をおき、ズルズルと座りこんだ。
カチッと勇気を出して、スタートボタン。
『キミが私にしてくれた。すべてのことが尊くて』
『なにも出来ない私のこと。諦めないでいてくれる』
『ありがとう、ありがとう』
最初のコメントを投稿しよう!