第一章 「灰色」

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 私色といえば、「灰色」でしょうか。 見た目は美人でもなく、といってそこまでブスでもないレベル。 性格はのんびり屋のマイペース。人当たりは良いと言われます。 ただ、どこかぱっとしないのです。 それは人生においても。 美術大学時代。当時油絵を専攻していた私は美術教員免許取得という謎の目標に燃え上がっていました。ですが、取得した瞬間燃え尽きたのか、"やっぱり自由になりたい!"とめらめら画家への気持ちが捨てきれず、現在は画材屋さんでパート勤務をしながら安い1Kのぼろアトリエ(某Kアパートの2階)でよくわからない油絵を描くという日々です。 教員免許は、ただの見栄でした。在学中にとれる資格はとっておこうという勢いで。それでもとれた私は天才ですね。 そう語っても、結局 "とりあえず免許あります" の一員になってしまったわけで、誰かに免許を見せることもなく、大学時代の苦労話をしたところでただの格好つけなのです。 まさに灰色人生。 33歳独身女。今年は厄年です。やったね。 申し遅れました。私の名前は 赤井りんご 。画家活動でのペンネームになります。完全に考える気がなかったと思われる名前ですが、その通りです。ですが、高校生の頃からこの名前で創作活動をしてきたものですから、変な愛着がありまして、特にそのまま変えることもなく、今もそう名乗っています。これからは赤井さんでもりんごさんでもアップルさんとでも、適当にお呼び下さい。  ― 誰か私に 彩(いろどり) を ― そう心で願いつつも、今日も変わらぬりんご日和です。
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