<第16章>イメージチェンジ

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<第16章>イメージチェンジ

大阪に戻ったまゆこは、帰宅する前に その足で、予約していた美容室へと向かった。 実に美容室へ行くのは5年ぶりだ。 髪をほどけば、腰よりも長かった。 彼女は年齢のわりに白髪も無く、 量もたっぷりとあるし、 割合丈夫な髪質である。 同年代の女性からは、羨まれる事も多かった。 髪も彼女の美点の一つだった。 ずっと一つにまとめてきたが、 しばらく入院すると言う事になったら 手入れも大変になるだろうからと バッサリ切るつもりだった。 ついでにパーマでもかけようかな? そう思い、相談してみる。 「そうですね。顎のラインで切ると お顔も小さく見えて、バランスが良くなると思います。 せっかくですから、お色も少し明るくしてみませんか? 雰囲気変わりますよ。」 好青年の美容師に薦められ、 言われるままに頷いた。 ボブカットなど、中学生以来だった。 切られている間、鏡を見ていられなくて 目をそらしていたが、 仕上げのシャンプーが終わり、髪を乾かしたあと目を開けると そこには別人のような自分がいた。 もっさりして、あか抜けないと思ってたのに。 髪を短くして、明るい色に変えて パーマで動きを出したら 急に自分でも『色っぽくなった?』と思えて、 ドキドキしてきた。 顎で揃えたラインが、 顔周りをシャープに見せてくれているし、 眉ギリギリでカットして斜めに流した前髪が、 目元をハッキリと魅せてくれていた。 「・・・嘘みたい。」 まゆこが呟くと、美容師は鏡越しに微笑んだ。 「良いですね。僕の会心の作です。」 失恋したら髪を切るって言うけど、 スッキリとするし、キレイになれるからなのね。 彼女はウキウキしながら、納得した。 せっかくなら、化粧品も洋服も 久しぶりに新調しようかな? ここ最近鬱々として楽しみがなかったし。 まゆこはそのまま、街へと繰り出した。
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