<第20章>約束

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<第20章>約束

まゆこが、休みの間に作った資料を読みながら 経理と事務を引き継ぐ。 物凄い量の仕事に、彼は珍しく 根を上げそうだった。 「あかんわ、もう!」 タクトがため息を付いた後、 伸びをしながら言うと、まゆこが呆れた。 「まだ半分も終わってへんのに。」 「あのさぁ、俺まゆこさんほど優秀やあらへんで。」 ぼやく彼に 「頑張って終わらせたら、ご褒美あげるから。」 まゆこが提案した。 なだめるように言った彼女を 見つめるタクトの目が光る。 “ご褒美、ね。” 「何でもエエの?」 さりげなく彼は尋ねた。 「薄給やから、高いのは無理やで。出来る範囲なら。」 笑いながら言うまゆこに、 タクトは言った。 「お金は使わんでエエよ。」 「え?」 「一日、俺に付き合って。」 まゆこの目が丸くなった。 「どういうこと?」 「俺と、一日デートしてよ。」 タクトが、まゆこの目を覗き込みながら言った。 「エエやろ?」 彼女がびっくりした顔で、反射的に頷く。 「エエけど。」 「じゃ、決まりね。 次の日曜に家の前まで迎えに行くから。」 茫然としているまゆこを尻目に タクトは内心ガッツポーズをしていた。 純愛ラプソディ<前編> ~完~
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