<第3章>心に刺さるとげ

2/3
前へ
/31ページ
次へ
幸せ逃げるって言いますよ。」 岡田にそう注意されるが、聞く気はなかった。 「ため息くらい好きにつかせてくれる?」 そもそも原因はあなたでしょ?と思う。 まゆこは冷たい口調でそう言うと、 仕事に戻ろうとしたが、岡田に腕を掴まれた。 「さっき『おばちゃん』言うたのが気に障るなら、 謝りますから。」 「別に?本当の事やし。」 25歳の岡田からしたら、 40歳の自分はおばさんでも仕方ないと思う。 彼と目が合いそうになってそらすと、 今度は正面に来られた。 綺麗な顔はズルい。 見られたらそれだけで、 考えていた事が飛びそうになっていた。  「うちの妹いちいち煩いんでね。俺の女性関係に。 少し誇張した言い方をしたけど、 本当には思ってませんから。」 「フォローせんでも気にしてないから。腕を放して。」 まゆこが強めにそう言うと、 彼はようやく手を放した。 「仕事と個人の関係は別やし、 仕事さえちゃんとしてくれたらええから。」 わざと突き放すように、彼女はそう言った。 本来なら言わなくてもいい事だった。 まゆこは少し後悔したが、 もう止められない。 「・・・あのさ、さっきの言い方は悪かったけど、 そんな偏屈な態度やと、嫁に行けんよ。」 岡田の顔に、怒りの表情が浮かんでいた。 「!?」     
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加