<第4章>泣き言

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昼に岡田から言われた言葉が頭から離れなかった。 「結婚できんよって言われてん。 こんな性格やったらって。 なんで、おばさんって言われた後で そんなことまで言われなあかんのやろうな、うち。」 ポタポタと涙がこぼれた。 にじんだ視界から、兄の顔が見える。 彼の顔がふと優しい表情になった。 「まゆこ、岡田君のことが好きなんやな、お前。」 「え?」 涙をぬぐいながら聞き返す。 「他の人にも今まで言われてきてるのに、 今ほど傷付いた顔は初めて見たわ。 もちろん、他の人に言われても 悲しかったんやろうけど、 好きな人に言われるのが一番堪えるからな。」 ポンッと肩を叩かれた。 「あの子も悪気はないんやで。 悪いこと言ったって反省してたし、 ついお前には『思ってもないことを言ってしまう』ってな。 それにあの子も、相当仮面をかぶって生きてるから 気を使わんでおられるのは、動物かお前の前だけなんやで。」 “仮面。” あの人当たりの良い、優しい彼は仮面なのか? 確かに、岡田はまゆこの前では飾らないし 皮肉も言う。 あの、他の人への完璧なまでの態度が 仮面と言うのか。 少しまゆこの気持ちが落ち着いてきた。 「お前、自分のこと過小評価しすぎやで。 うちの病院は、お前がおらんと成り立たん。 頼りにしとるんやから。」     
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