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<第10章>まゆこの手術
タクトはその日、一日中落ち着かなくて
病院の中を無駄に行ったり来たりしては、
院長先生に笑われていた。
「大丈夫やから。心配なのは、俺も一緒や。」
「そうなんですけど、どうも落ちつかんで。」
こんな日に限って、患者も少ない。
だが、まゆこを心配した古い患者達が
用もないのにやってきては、見舞いの品を置いていった。
なんだかんだ言って、愛されているのである。
「まゆこさんおらんと、落ち着かんなあ。」
いつも来るおじいさんに、からかうように言われると
タクトは真っ赤になった。
「イケメン先生も、年貢の納め時か?
ちゃんと他の女は、切らなあかんで。まゆこさんは真面目な人やから。」
説教されてしまった。
だが、何だか認められたようで
タクトは嬉しかった。
「もちろん、そのつもりです。」
彼がそう返すと、院長が嬉しそうに笑った。
「うちの次期院長ですから。」
タクトがびっくりして彼を見ると、
「それはええな。」
とおじいさんが賛同した。
とにかく早く仕事が終わらないか、
そればかり考えて、そわそわしているタクトだった。
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