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<第14章>ラプンツェルと王子
まゆこは夕方岡田が現れたのを見て、
ラインに返信していなかった事を、思い出した。
「岡田君、ごめんな。ラインに何も返さんと。」
慌てて彼女が言うと
「ええよ。疲れとったんでしょ?」
にっこり笑って返された。
その笑顔はやっぱり王子様で、
まゆこがため息を付きながら見つめると、
じっと見つめ返された。
「まゆこさん、傷はどないです?」
いたわるように聞かれ、心が温かくなる。
「すごく痛いって聞いていたわりには、
思ったより平気やわ。」
彼女は言った。
「家で倒れたときの方が、よっぽど痛かった。」
「そうか。まだ縫ったばかりやから、無理せんようにな。」
と、岡田が言う。
その言い方が優しくて、泣きそうになった。
いつもキレイな若い女の子を引き連れて、
お洒落で洗練されている彼が、
自分の事を好きだなんて、いまだ彼女は信じられない。
ずっと憧れていたけど、憧れは憧れのまま
そっと心の中に隠しておこうと
思っていたのに。
あの日曜日、彼に抱きしめられて
キスをされた瞬間から
彼女の心は動き出してしまった。
もう止められはしないと思うと、
切ないような、怖いようなそんな気持ちだった。
気が付けば、ベッドの隣で椅子に腰掛けた彼が
まゆこの手を握っている。
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