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<第15章>惚れた弱み
“また今日も、聞けなかった。”
内心そう思いながら病院を後にしたタクトは、
自宅へ帰る道のりの間、
まゆこの唇の感触を思い出していた。
好きでもない男に、手を握らせたり
ましてやキスをさせたりする女では
ないことは分かってる。
だけど自分の事を『好きだ』と言って欲しい。
タクトは、自分が女にそれを求められていた時は
鬱陶しくて仕方がなかったくせに、
いざ自分の方から好きになると、
言ってもらいたくて仕方がない。
人の心はなんて勝手なんだろうと思っていた。
仕方ない、惚れた弱みである。
もどかしいような、恥ずかしいような、嬉しいような
悔しいような。
そんな気持ちだった。
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