<第16章>キョウコのからかい

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<第16章>キョウコのからかい

「お兄ちゃん、最近楽しそうやんか。」 妹のキョウコが、からかうように言って来た。 「“事務のオバちゃん”と上手い事行ってるんやな。」 ニヤニヤする彼女を、タクトは横目で睨んだ。 「本人の前で絶対に言うなよ。しばくからな。」 「わかっとるって。ちゃんと 可愛い猫引っ張り出してきてかぶるから。」 笑いながら言う。 キョウコにまゆこの事を話したのは、 まゆこの病気の話を聞いた、その日だった。 「ああ、お兄ちゃんが女の人のこと “オバちゃん”なんて言うから、うちはてっきり その人に振られたんかと思ってたわ。」 「なんでや。」 「だって、お兄ちゃん、80代のおばあちゃんでも “お姉さん”言うやんか。てっきり振られた腹いせかと。」 「・・・違うわ。アホ。 お前があの頃、俺の付き合う女に嫌がらせしとったからやろ。」 ブラコンのキョウコは、中学生時代 兄の恋路を、片っ端から邪魔して回っていたのだ。 「まゆこさんに、余計な事言われたくなかったんや。」 まあ、そのせいで自分が余計な事を言って 嫌われてしまったのだが。 「なんや、あのときから本気やったんか。」 キョウコが呆れて言った。 「ずいぶん時間をかけたな。 早く兄ちゃんがモノにしとけば、病気になる前に     
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