15人が本棚に入れています
本棚に追加
<第16章>キョウコのからかい
「お兄ちゃん、最近楽しそうやんか。」
妹のキョウコが、からかうように言って来た。
「“事務のオバちゃん”と上手い事行ってるんやな。」
ニヤニヤする彼女を、タクトは横目で睨んだ。
「本人の前で絶対に言うなよ。しばくからな。」
「わかっとるって。ちゃんと
可愛い猫引っ張り出してきてかぶるから。」
笑いながら言う。
キョウコにまゆこの事を話したのは、
まゆこの病気の話を聞いた、その日だった。
「ああ、お兄ちゃんが女の人のこと
“オバちゃん”なんて言うから、うちはてっきり
その人に振られたんかと思ってたわ。」
「なんでや。」
「だって、お兄ちゃん、80代のおばあちゃんでも
“お姉さん”言うやんか。てっきり振られた腹いせかと。」
「・・・違うわ。アホ。
お前があの頃、俺の付き合う女に嫌がらせしとったからやろ。」
ブラコンのキョウコは、中学生時代
兄の恋路を、片っ端から邪魔して回っていたのだ。
「まゆこさんに、余計な事言われたくなかったんや。」
まあ、そのせいで自分が余計な事を言って
嫌われてしまったのだが。
「なんや、あのときから本気やったんか。」
キョウコが呆れて言った。
「ずいぶん時間をかけたな。
早く兄ちゃんがモノにしとけば、病気になる前に
最初のコメントを投稿しよう!