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子供も産めたかもしれへんのに。」
それは確かに、そうだった。
「せやけど、俺かて自信無かってん。
医者としてやってくのも、まゆこさんと釣り合う自信も。」
「そらそうやろうけど、他の女にはバンバン手を出しといて
あの人だけ特別扱いって・・・
あの頃の兄ちゃんの彼女達が聞いたら、浮かばれへんやろ。」
さらに呆れて彼女は言った。
「そら、俺かて男やから、頭と身体は別の時もあるわ。」
「何か生々しい話やな。」
少しキョウコが嫌そうに言う。
「お兄ちゃんも男なんやな。」
「そらそうや。」
キョウコが黙り込んだ。
「・・・てっちゃんも、そうなんかな?」
ボソッと彼女が言う。
てっちゃんこと、岩男徹也はキョウコの男友達で
彼女にずっと片思いをしていたが、
最近従兄弟のタカヒトの影響もあり、
二人の仲が進展しつつあった。
「そらそうやろ、あの子かて男や。
お前が何にもさせへんかったら、
他の女で解消しようとしても、文句は言われへんで。」
黙り込むキョウコを見ると、
泣きそうな顔をしている。
「うち嫌や!そんなん。」
悲しそうに顔をゆがめるキョウコが、まゆこに重なった。
タクトの胸がチクリと痛む。
「・・・ごめん。」
と彼は言って、キョウコの頭を撫でたのだった。
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