<第2章>彼女に似てる人

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<第2章>彼女に似てる人

タクトはあの場所へ 彼女を連れて行こうと思っていた。 お盆に、従兄弟の彼女のひろこと行った 動物の保護施設である。 彼女は受け入れてくれるのか? 少し心配ではあった。 車を走らせながら、 時々横目でまゆこを見る。 短く切った髪が、彼女の輪郭を美しく見せていた。 紅色のブラウスも、彼女の白い肌に映えている。 追いつけない15年の事を考えると 胸が苦しくなるけれど、 彼はひろこに恋をした時、 本当に自分が求めているものに 気が付いてしまったのだ。 それはソウの店で、彼に言われた事でもあった。 『今までなら付き合わないタイプの人』 ひろこさんの事を、そう言われたけれど 実は彼は、ずっとまゆこを欲していたのだった。 他の誰でも埋まらない隙間を 埋めようとするあまり 何人もの女と付き合い、 遊び人のように思われる。 ただの時間つぶしや、欲求の処理のために なおざりに付き合うのはもう止めたい。 そう思っていた。 広い一軒家にたどり着くと、 責任者の岡田さんが迎えてくれた。 「いらっしゃい。」 タクトとまゆこに挨拶をしたあと、 彼は二人を見比べて、そして言った。 「タクト君、とうとう本命連れてきたな。」 ニヤリと笑われ、彼は赤くなった。 何のことか分からないまゆこは、 瞬きをしながらタクトを見る。 彼は、彼女の視線を受け止めることが出来ずに ふとそらした。 「ま、ええわ。二人ともこっちにおいで。」 「はい。」 まゆこが返事をして歩き出すと、 少し前の雨で ぬかるんだ地面に足を取られそうになった。 タクトがサッと手を貸す。 「ありがとう。」 彼女からにっこりと笑いかけられて、 タクトは幸せだった。
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