<第17章>ライバル出現

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<第17章>ライバル出現

まゆこが入院している婦人科は、 総合病院の中にあった。 主治医の先生も、メインの先生以外に数人在籍しており 持ち回りで担当している。 ある日、回診に来た先生を見て まゆこは絶句した。 「平井くん!?」 二人は目を合わせた。 同じ高校だった、平井雅喜が婦人科の先生になっていたのだ。 驚くまゆこに 「音成?って思ってたけど、やっぱり音成だったんか。」 と平井は言った。 珍しい苗字なので、もしかして?と思っていたらしい。 高校の同級生で成績の良かった二人は 学級委員を組まされていた。 3年間腐れ縁が続いていたが、大学進学を機に疎遠になった。 ほとんど友人のいないまゆこにとって 平井は珍しく“友達”と呼べる存在だ。 「苗字、変わってへんのな。」 ボソッと彼に言われ、まゆこは頷いた。 「うん。ずっと独身やわ。」 「そうか。俺は一昨年独り身になったわ。」 「色々あったんやね。」 「まあな。」 苦笑いする顔は、昔の記憶よりも男らしくなっていた。 「音成はすっかりキレイになったな。」 少し眩しそうに言われて、まゆこはドキッとした。 全ては岡田のおかげ、というか 岡田のせいである。 「そ、そうかなぁ。」 照れくさいような気持ちで、彼女は返した。 「なあ、昔お前の事好きやったんやで。 お前は知らんかったやろうけど。」 彼女は目を丸くした。 「嘘!」 「キレイになったから言ってるんとちゃうで。 俺の初恋やったんや。」 ただただ、驚くばかりだった。 “これは、モテキってやつやろうか?” まゆこは少しこそばゆく思いながら、 ニコニコと彼の話を聞いていた。
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