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<第19章>ライバル出現 その2
夕方に平井の回診があり、
まゆこはそこで、現在の自分の話をしていた。
従兄弟に会いに行った話では、一緒に怒ってくれて
まゆこは嬉しかった。
「俺ならそんな哀しい思いは、させへんのに。」
と言ってまゆこと向き合うと、真剣な目をした。
何だかドキドキして目をそらすと
平井が「音成は、恋人は居るんか?」
と、聞いてきた。
「そんなん知って、どないするの?」
まゆこが言うと、
「そやな。誰もおれへんかったら
立候補しようかな?」
とふざけた顔で言うから、彼女は思わず吹き出した。
「恋人とははっきりとしてないけど、好きな人はおるよ。」
まゆこは平井に言った。
「ずっと好きやってん。やけど向こうはだいぶ年下やし、
カッコよ過ぎて、よう言い切らんかってん。」
「けっこうって、いくつ?」
「15歳下の、31歳や。」
平井が絶句した。
「やけど、この間デートして帰りに告白してくれてな。
ここにも毎日来てくれてる。」
嬉しそうに言うまゆこに、
平井が心配そうな目を向けた。
「あの、水を差すようやけど
騙されてへんよな?音成。」
「同じ動物病院に勤めてんねん。
悪いコトなんかでけへんよ。」
彼女は笑い飛ばした。
「そうか?心配やな。音成はまっさらやから。」
平井がそう言うと、まゆこに近づく。
「ほんまキレイになったわ。」
「何も出らんよ、褒めても。」
赤くなって彼女が言うと、病室のドアが力強くノックされた。
「岡田君や!」
まゆこの顔が明るくなる。
そんな彼女を複雑そうな表情で見ながら、
平井は病室を後にした。
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