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<第22章>タカヒトへの電話 その2
「・・・おまえ。」
一通りタカヒトの話を聞いたタクトが、
そう言ったきり絶句した。
「それは、一歩間違えると強姦だろう?」
“ああそうですよ。”
タカヒトは内心ちょっと開き直りながら、そう思った。
確かに、そう言われても仕方のない行為をしたのだ。
あの夜、彼女に告白をしようと
酒の力を借りたタカヒトは
結局冷静に彼女を口説く事が出来ずに
強引に自宅に連れ帰ったあと、
押し倒して抵抗の出来ない状態にしてから、思いを遂げたのだ。
合意も何もあったものではなかった。
「まさかタカヒトが、野獣とは・・・・。」
タクトが呆れたように言った。
「だから話したくなかったんだよ。」
と、タカヒトがつぶやく。
「ひろこさんからも『遊びかと思った』って言われたし、
友達からも叱られたし、反省してるんだからさぁ。」
本当に触れられたくない過去である。
良くこんな自分を受け入れてくれたと、
彼女には感謝しているのだ。
「まあ聞いたのは俺やしな、ごめんごめん。」
タクトが謝ったが
「俺はさすがにその手は使えんなあ。」
とつぶやいた。
「タクト兄さんの事だから、
キス位はしたんでしょ?」
「どうしたタカヒト!おまえ鋭いぞ。」
「さっきから失礼だなあ。」
呆れた口調でタカヒトは言った。
「俺は真っ直ぐ物事を見るから、
色々分かるんだよ。
・・・・ひろこさんのこと以外は。」
最後はぼやくようにつぶやくと、タクトが笑った。
「やっぱり惚れた女の事は、おまえも分からんもんやな。」
安心したような言い方だった。
「キスしたら分かるんじゃないの?タクト兄さんなら。」
「うーん。嫌われてないことくらいは分かるけど
惚れてくれてるかは、分かれへん。」
これはかなり本気だなと、タカヒトは思った。
いつもはかなり冷静なのに。
「俺の話が役に立つとは思わないんだけどさ、
真っ直ぐに伝えた方がいいと思うよ。
付き合ってとか、結婚してとかさ。」
たいした事ないアドバイスしか出来ないが、
タクトには響いたらしい。
「そうか。そうしてみる。」
彼はタカヒトに同意して、電話を切った。
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