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<第23章>彼氏になりたい
タクトは次の日もまゆこの見舞いに行った。
彼女の洗濯物をまとめていると、
視線を感じる。
ふと振り返ると、整った顔立ちの若い女性の看護師が
彼を見つめていた。
ちょっと、イイ女だった。
「マメに来られてますけど、弟さんですか?」
タクトを見る視線が熱い。
「いえ、違います。」
まゆこは検査の為外している。
花の水を替えていると、
そっとメモを渡された。
電話番号だった。
この間までなら喜んで受け取って、
2~3回は会ったと思うが、
今は全く心を動かされない。
「あの、ごめんなさい。これ返します。」
彼はもらったメモを、そのまま彼女へ手渡した。
「俺、音成まゆこさんの彼氏なんで。
気持ちはありがたいけど、
他の女性の事は考えられないんです。
ごめんなさい。」
にっこりと笑って彼女をじっと見ると
「そうだったんですね、失礼しました。」
真っ赤な顔で言われ、
慌てて去っていった。
“まゆこさんの彼氏なんで。”
思わず自分の口から出た言葉に
タクトは1人、にやけていた。
“恋人”やら“彼氏”“彼女”やら
関係性に縛られた付き合いなど、真っ平だと思っていたのに。
まゆこには、従属したいと思っている。
彼はそんな自分に気付いてしまった。
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