<第23章>彼氏になりたい

1/1
前へ
/59ページ
次へ

<第23章>彼氏になりたい

タクトは次の日もまゆこの見舞いに行った。 彼女の洗濯物をまとめていると、 視線を感じる。 ふと振り返ると、整った顔立ちの若い女性の看護師が 彼を見つめていた。 ちょっと、イイ女だった。 「マメに来られてますけど、弟さんですか?」 タクトを見る視線が熱い。 「いえ、違います。」 まゆこは検査の為外している。 花の水を替えていると、 そっとメモを渡された。 電話番号だった。 この間までなら喜んで受け取って、 2~3回は会ったと思うが、 今は全く心を動かされない。 「あの、ごめんなさい。これ返します。」 彼はもらったメモを、そのまま彼女へ手渡した。 「俺、音成まゆこさんの彼氏なんで。 気持ちはありがたいけど、 他の女性の事は考えられないんです。 ごめんなさい。」 にっこりと笑って彼女をじっと見ると 「そうだったんですね、失礼しました。」 真っ赤な顔で言われ、 慌てて去っていった。 “まゆこさんの彼氏なんで。” 思わず自分の口から出た言葉に タクトは1人、にやけていた。 “恋人”やら“彼氏”“彼女”やら 関係性に縛られた付き合いなど、真っ平だと思っていたのに。 まゆこには、従属したいと思っている。 彼はそんな自分に気付いてしまった。
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加