<第6章>告白

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<第6章>告白

帰り道、二人は空を見上げながら、 酔いを覚ましていた。 「ねえ、従兄弟の彼女さんを好きになったの?」 まゆこが、ボソッと聞く。 まだ少し目が赤かった。 「あいつ、その話したんか。」 タクトが恥ずかしそうに言った。 「実は、そうやねん。 で、キスしようとしたら従兄弟に思いっきり、殴られてん。」 ははは。と乾いた笑いが響く。 「一応、俺の名誉の為に言っておくけど、 未遂やで。してへんからな、キス。」 頭をかいてる姿を見たら、 何だか可愛く思えてきた。 「振られたって聞いたけど、 岡田君を振る人なんて、いるんやね。」 まゆこが言うと、彼は少し気分を害したように 口を開いた。 「まゆこさんは、相手すらしてくれへんやんか。」 「え?」 「いつも俺が褒めても、聞き流しとるし。 悪口だけやろ?ちゃんと聞いてるの。」 じっと見つめる瞳が、まゆこを捕らえた。 漆黒の目が、宝石のように光る。 その輝きから、まゆこは目を離せない。 「今日行った保護施設かて、 本当はずっとまゆこさんと行きたかってん。 今日連れてった店かてそうや。 あそこだって、本当に好きな女やないと 連れて行かん店や。」 真っ直ぐに彼が言う。 そして、まゆこをぐっと抱きしめた。 仕事場で彼女を抱いたときより、 ずっと強く抱かれている。 彼の汗と香水の匂いが漂う。 がっちりとした身体は、しなやかな筋肉で覆われており 心臓の鼓動まではっきりと分かった。 体温が混じり合って、身体が溶けそうになる。 すぐそばに近づいた岡田の顔を、 まゆこはじっと見つめていた。 とてもキレイな顔だった。 「あかん、こんなことされたら うちどないしたらええか、わからへん。」 囁く彼女を、岡田は優しい目で見つめた。 まゆこと知り合ってから 今までで一番優しい目だ。 「俺に任せてくれたら、ええ。 まゆこさんの事が、好きなんや。」 岡田はそう言うと、 ゆっくりとまゆこに近づいて、 そっと優しくキスを落とした。
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