<第7章>ファーストキス

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<第7章>ファーストキス

「まゆこさんの事、好きなんや。」 耳元をくすぐる甘い声で囁かれ、 まゆこの身体は、溶けそうになっていた。 こういう時どうしたらいいのか分からず 彼女は岡田にすがりつく。 彼の腕の力は強くなり、 優しく見つめられたかと思ったら、ゆっくりとキスをされた。 岡田からエネルギーが流れてきて、 まゆこを満たしてゆく。 触れるだけのキスが、何度も何度も 繰り返された。 長い吐息をつくと、 「可愛いよ、まゆこさん。」 耳たぶにキスをされながら、囁かれる。 「あっ。」 彼女の身体からさらに力が抜けていった。 この年になるまで、 学生時代のフォークダンスくらいでしか 異性の手を握った事もない彼女にとって あまりにも刺激的な体験だった。 「みんな、こんな事してるの?」 まゆこが、うっとりした目で岡田に尋ねた。 「せや。まゆこさんは初めてなんか?」 「・・・・うん。初めてや。」 もう四捨五入したら、 50にもなろうとする、いい年の女がと思うと 恥ずかしかった。 思わず彼女は目を伏せるが、 岡田の大きな手が彼女の頬に添えられ、 そっと持ち上げられた。 彼と目が合うと、優しく微笑みかけられる。 「俺、まゆこさんの“初めて”か。」 嬉しそうに言われて、びっくりした。 「なんや、嬉しすぎるわ。」 彼の抱く力が強くなる。 優しく髪の毛を手ぐしで整えられ、 その指の感触に、彼女はうっとりしていた。 「気持ち、いい?」 聞かれて彼女は頷く。 もっと、たくさん触れて欲しかった。 「なあ、全部俺が教えてあげる。」 彼の瞳がきらめいた。 「だから、早く元気になって戻ってきてな。」 「ぜ、全部っ!?」 いきなりもっと刺激的な事を言われ、 まゆこは目を丸くした。 「全部は、全部や。」 ニヤリと笑われ、真っ赤になる。 「知りたかったら、早く戻ってきて。」 岡田はそう言うと、再びまゆこの唇に ゆっくりとキスを落とした。
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