瞬き

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 もう観念して彼女に僕の全てを打ち明けるしかない。彼女なら受け止めてくれるかもしれないし、本当のことを打ち明けたことで別れることになったとしてもそれは仕方がないと諦めよう。  「あのな、俺は本当は」そこまで言うと、彼女は僕の告白を遮るように唇を重ねてきた。驚き、思わず目を閉じる。  暫く、彼女の肉厚で柔らかい唇の感触のみに五感が支配されたが、恐る恐る瞼を開く。すると、彼女もゆっくりと瞼を開いている所だった。彼女のきれいな眼球と瞼の間にあるもう一枚の膜が僕を見つめている。  「私の眼見た? 」  彼女は無邪気にウインクをして駆け出す。 そんな彼女の姿を眺めつつ、瞬きをするとあの夏の海岸で横たわる彼女の美しい肢体が目に浮かぶ。                                   了
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