雪にとける花

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1:西園寺家 〈応接間・朝〉 美桜「おまえ、スープが器から少しこぼれている。拭け」 榊「申し訳ございません。すぐに」 日葵「美桜、客人の前だ。よしなさい」 美桜「あら、どうして? お父様。    榊は私の世話係のはずよ」 桔梗「西園寺家では代々世話係がつくとは聞いておりましたが、    本当だったんですね」 日葵「ああ。幼い頃から、公に公表している訳ではないが、    男には女を、女には男をつけるのが我が西園寺家の古くからの習わしでね。    はっきりとした理由は私も知らないのだが……」 桔梗「なるほど」 美桜「はっきりとした理由もないのに、続ける必要なんてあるのかしら」 桔梗「ハッハッハ。お嬢様は気丈でいらっしゃる。    やはり妻とする人は強い女性がいい」 美桜「お待ちください。    わたくしはこの縁談、まだお受けしたつもりはございません」 桔梗「そうでしたね。失敬」 日葵「申し訳ないね、桔梗くん。娘はまだ子供なもので」 桔梗「いえ、いいのです。    気丈で、ミステリアスな女性には惹かれるばかりだ」 美桜「今までどんな女性もそうやって落としてらっしゃったのかしら。    わたくし、怖いわ」 日葵「美桜!!」 美桜「お父様、大きな声を出さないで。    せっかくのお料理の味が落ちてしまいそう。    桔梗さま、わたくし外の空気を吸いたいわ。    天気も良いし、少し庭を歩きません?」 桔梗「いいですね。行きましょう」 美桜「榊、着替えをするわ。準備を」 桔梗「えっ……榊さんも一緒に行かれるのですか?」 美桜「もちろんよ。わたくしの世話係ですもの」 桔梗「ということは……その、お嬢様のお着替え中もご一緒に……」 美桜「ええ」 桔梗「なるほど……その、少し妬いてしまいそうですね」 美桜「なぜ? 彼はただの世話係。    道端の石ころと何ら変わりありません。    それとも、あなたは普段から石ころにも嫉妬なさるの?」 桔梗「いえ、それは……」 日葵「桔梗くん、安心したまえ。    娘のいうとおり、世話係を気にする必要はない」 桔梗「はい……ではお嬢様、また後ほど」 美桜「ええ。榊、早く準備を」 榊「……かしこまりました」
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