雪にとける花

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3:青年期の記憶 - 1 お嬢様と出会って、10年の月日が経った。 齢15の昼下がり── それは、良く晴れた冬の日。 暖かな日差しが降り注ぎ、溶け始めた雪が少し残っていた。 美桜「もう、おうちでのお勉強なんて退屈!    こうしてずっと庭園で日を浴びながら駆けまわっていたいわ。    この花たちのように……」 お嬢様は花々が咲いた庭に座り込み、 控えめに咲いている白い花を摘んでいる。 榊「お嬢様には勉学の才能がありますのに、もったいない。   今日もフランス語の先生が感激されていたじゃないですか」 美桜「最初はとても楽しいと思ったわ。    知らないことを知っていくことは楽しい。でも……」 榊「でも……?」 美桜「実際にこの目で見たくなってしまうの。    体験したくなってしまうの。      私、この家からまだ一度も出たことがないのよ?    フランス語を習ったならば、実際にフランスへ行って現地の空気を感じたいの」 榊「それは……」 美桜「ふふ。困らせてしまったわね。    これを受け取ってくれる?    私との将来を誓う、とても意味のある花なのよ」 お嬢様は先程摘んだ白い花で作った花飾りを私の方へ差し出す。 少し照れ臭そうに微笑んだお嬢様は、 この世の女神と見間違うほどの美しさだった。 お嬢様は出会った日から、日に日に美しさを増していた。 榊「お嬢様からこのような贈り物を……勿体ない……」 深々と頭を下げると、美桜は慌てて私の頭を持ち上げる。 美桜「止めてってば!」
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