雪にとける花

7/13
前へ
/13ページ
次へ
3:青年期の記憶 - 2 お嬢様は静かに涙を流していた…… 美桜「おまえはたった一人の私のお友達なのよ。    私と共に育ち、私の事を一番よく知っている。    おうちで開かれるパーティーで出会う、口先だけの着飾った男たちとは違うの!」 榊「いえ、私はあくまでお嬢様の世話係でございます。   パーティーに来られる殿方とは身分も異なり、   比較すること自体、罪だと感じられるほどでございます」 美桜「いいえ、榊。    将来、おまえは私と結婚するのよ。    生涯を共にするなら、身分はどうあれ誠実な方がいい。    それに誓ってくれたはずよ。    その証拠に、おまえは先ほど私がお送りしたお花を受け取ったじゃない」 そう言って、白い花飾りを持った私の手を握り、 お嬢様の薄紅色の少し濡れた唇が、私の唇にそっと触れた── 潤んだ真っ直ぐな瞳で見つめるお嬢様。 目を反らせず、胸がザワつく── 〈回想〉 日葵『美桜に決して恋をしてはならない』 〈回想戻り〉 幼い頃から意味も分からず私の脳内で反芻してきた言葉に、 始めて重みを感じた瞬間だった。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加