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3:青年期の記憶 - 2
お嬢様は静かに涙を流していた……
美桜「おまえはたった一人の私のお友達なのよ。
私と共に育ち、私の事を一番よく知っている。
おうちで開かれるパーティーで出会う、口先だけの着飾った男たちとは違うの!」
榊「いえ、私はあくまでお嬢様の世話係でございます。
パーティーに来られる殿方とは身分も異なり、
比較すること自体、罪だと感じられるほどでございます」
美桜「いいえ、榊。
将来、おまえは私と結婚するのよ。
生涯を共にするなら、身分はどうあれ誠実な方がいい。
それに誓ってくれたはずよ。
その証拠に、おまえは先ほど私がお送りしたお花を受け取ったじゃない」
そう言って、白い花飾りを持った私の手を握り、
お嬢様の薄紅色の少し濡れた唇が、私の唇にそっと触れた──
潤んだ真っ直ぐな瞳で見つめるお嬢様。
目を反らせず、胸がザワつく──
〈回想〉
日葵『美桜に決して恋をしてはならない』
〈回想戻り〉
幼い頃から意味も分からず私の脳内で反芻してきた言葉に、
始めて重みを感じた瞬間だった。
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