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<第34章>根回し
「お兄ちゃん、良かったな。
おかあちゃんたちに、まゆこさんを紹介したんやろ?」
久しぶりに自宅に戻って、妹に言われた。
タクトは彼女を見て微笑む。
「おまえが根回ししてくれたんやろ?ありがとうな。」
きっとキョウコの事だから、
陰で色々言ってくれていたのだろう。
「ばれたか。」
ペロリと舌を出す。
「兄ちゃんの為やからな、いい仕事したやろ?」
ニヤリと笑う。
「うちの時も、頼んだで。」
「おう、任せとき。」
タクトが請け負うと、キョウコは兄の肩を叩いた。
「いよいよ、院長先生やな。兄ちゃんも。」
タクトが少し、赤くなる。
「器やあらへんな。ほんまに。」
「大丈夫やて、その顔でハッタリ効かせたりや。
まゆこさんしっかりしてそうやし、あの人おったら大丈夫やろ。」
「うん、そうやな。」
タクトは、自分を支えたいと
言ってくれたまゆこの顔を思い出した。
愛しくて仕方が無い。
「本当に惚れてんねんな。」
ふふと笑いながら言うキョウコに、
タクトは頷いた。
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