<第11章>兄の秘密

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うちの病院に岡田君が就職してきた時、 まゆこが岡田君に一目惚れしたのは分かりました。 岡田君が、まゆこの事を好きなのも知ってました。 だけど、二人ともずっとその気持ちに気付いていなくて もどかしい気持ちと、 二人が上手く行かなければいいのにと 思う気持ちが、俺の中にありました。 まゆこが病気になった時、 罰が当たったと思って後悔しました。 兄弟愛に見せかけて、まゆこを独占しようと 思った俺の心が罰を受けたのだと。 まゆこのウエディングドレス姿は 見ることが出来そうにありませんが 兄として、男として おまえを愛していた事には、変わりません。 岡田君といつまでも仲良く、幸せに暮らしてください。 それが俺の望みです。 音成恭平』  読み終わり、思わず手紙を取り落としたまゆこを タクトが抱き寄せる。 「おかあちゃんは全部知ってたんやね。」 ガクガクと震えるまゆこの瞳から、 涙があふれてきた。 タクトの瞳からも、涙が零れ落ちる。 いつもニコニコと穏やかで、 誰からも慕われていた。 そんな院長の秘密が、 今になって二人の目の前に露になった。 タクトの手紙にも、似たようなことが書かれていたが 彼だけ最後の一文が多かった。 “岡田君を男と見込んで頼みます。     
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