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<第11章>兄の秘密
帰宅したとたん、まゆことタクトは
それぞれの場所から手紙を引っ張り出してきた。
なんだかドキドキしてくる。
二人は黙って、封筒から手紙を引っ張り出した。
「!?」
一瞬手が止まる。
「逆、やない?」
まゆこが言った。
そう、手紙の宛名が“岡田君へ”となっている。
二人は手紙を交換した。
『まゆこへ
ミツコが亡くなってから、18年でしょうか。
おまえには苦労をかけました。
“偏屈だから、よそでは働けない。”
そう言って、おまえをうちの病院で働かせてましたが、
本当は、俺がまゆこを外に出したくなかったのです。
俺は、父さんと母さんの本当の息子ではありません。
まゆこにとって、伯父さんに当たる人の子供で
まゆこから見たら、本当は従兄弟になります。
俺が生まれた時、事故で本当の両親が亡くなった為、
当時子供のいなかった、父さんと母さんが
俺を育ててくれました。
だから、父さんに恩返しがしたくて
獣医になり、必死で病院を無くさないよう
頑張って、今までしのいで来たつもりです。
ミツコが亡くなって、俺も死にたいと思ったとき
まゆこの顔が浮かんで死ねなかったのを
今でも覚えています。
言えなかったけど、
俺はまゆこが1人の女性として、好きでした。
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