<第12章>天空まで届け

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<第12章>天空まで届け

「知っとったで、恭平の気持ちは。」 次の日曜、ホームに行き 母親に手紙を読んだ事を話すと、 母はまゆこにそう返した。 「ミツコさんが亡くなった後で、 はっきりと自覚したみたいやけどな。」 「うち、全然気付かんかったわ。」 まゆこがため息をつきながら言うと、 母親は苦笑した。 「そりゃそうや。あの子必死で隠しとったもん。 岡田君みたいに、ダダ漏れでも気付かへんまゆこが、 気付くわけないやろ?」 言われて彼女は赤くなった。 「それに、気付かれたら、もう一緒には 住めないって思ってたようやし。」 確かにそうだ、対処に困るし 変な距離感も生まれそうだった。 気付かなくて良かったのだ、きっと。 「墓場まで持って行くつもりだったみたいやけど、 あまりにもまゆこが自分に自信を持ってへんから、 最期に打ち明けようと思ったらしいわ。」 そうか、とまゆこは思った。 女としての自信に欠けるまゆこに、 愛されていた証拠を残して、彼はこの世を去ったのだ。 まゆこは、兄からプレゼントをもらった気分だった。 それは、かけがえの無いプレゼントだった。 「院長先生ともライバルやったんか、俺。」 タクトが天を仰ぎながら言う。 「一切勝てる気せえへんから、 生きてる間に打ち明けてくれんで、本当に良かったわ。」 苦笑いしている。 「少なくとも、顔はタクトのが好みやから。」 すかさずまゆこが言うと、 母親が吹き出した。 「なんや、もう!あんたら、惚気は家でやりや。 早よ帰りなさい。」 母親とその友人達に、ホームを追い出された二人は 顔を見合わせて爆笑する。 “この大きな笑い声が、天まで届きますように。” 二人はそう祈りながら、ホームを後にした。 純愛ラプソディ~完~
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