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<第9章>兄の墓参り
まゆことタクトの二人は、
タカヒトとひろこを新大阪まで見送った後で
兄の墓前に向かった。
「お兄ちゃん、岡田君の妹のキョウコちゃんが
うちらの式をしてくれたんよ。」
彼女が手を合わせながら言う。
「まだ学生さんやのに、一生懸命お金貯めて
うちのお化粧までしてくれて。」
その後が、言葉にならない。
感極まって泣くまゆこに、
タクトがまたハンカチをそっと差し出した。
「ええ女が、台無しやで。」
「なあ、うちこんなに幸せでええんかな?」
ポロポロと涙を流すまゆこに、タクトは頷いた。
「大変な事も、辛い事も沢山あったやないか。
幸せに、なろう。
まあ、まゆこさんが嫌やって言っても、
俺がもう離さんけどな。」
そう言うタクトを、まゆこが見上げる。
二人の目が合うと、微笑みあった。
「院長先生、いやお兄さん。
生きてる間に、お兄さんって呼ばれへんで
ほんまにスミマセンでした。
絶対幸せになって、次に病院を任せられる人を育てますから。」
タクトの目にも涙が浮かぶ。
「だから、見ててください。お義姉さんと一緒に。」
一陣の風が吹く。
それが彼らへの答えのようだった。
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