曇天の霹靂

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 「隕石やべえな」スグルがにやにやしながら言う。「急に脈略もなく落ちてくるんだね」「怖えな、でもバイト先にも落ちねえかな、店長マジで最悪だし」「バイトなくなったらボウリングする金なくなるだろ」僕らは大学のボウリングサークルに所属していたが、スグルと僕はお互い独り暮らしの身、ボウリングの大会費が意外と生活を逼迫する状況に陥っていた。特にスグルにあっては先月分の費用をすべてサークルに立て替えてもらっている有様だ。「そうだけど、いやでもバイト行きたくねえな」モニターが次のニュースに移り替わるように、スグルの話題もいつの間にかバイトの愚痴になっている。スグルは池袋のファミリーレストランでアルバイトをしているが、職員が仕事をあまりせずバイトに任せてくると愚痴を続けた。そのあと駅までの道のりスグルは延々としゃべりつづけ、最終的にはバイト先の三上さんの美貌について事細かに述べて「今度三上さんと飲みに行こうぜ」 と冗談のように言ってJR改札の人波に吸い込まれた。その日は僕もすっかり隕石落下のことなんか忘れて、帰りの電車の中では明日の3限目の後の暇な時間に何をすべきなのかを考え始めていた。そして次の日の日にな ればそれも忘れて、3限目の終わりにはスグルの三上さんとどうすればもっと仲良くなれるかの談義に付き合わされていた。
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