曇天の霹靂

3/9
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
 そして1週間経った3月22日の2限目終わり、「隕石やべえな」スグルがスマホの画面を見せつけてきた。「原因不明の謎の疫病大流行 隕石の影響か」この記事によると、1週間前からギニア国内のある地域で謎の疫病による被害者が大量発生しているという。そしてそこはまさに隕石が落下したその地区であり、軌を一にして疫病が広がったらしい。その疫病にかかると、「身体が溶けて消えてしまう」という。地球外物質が隕石に付着して舞い降り、それが人体になんらかの作用を及ぼしているのではないか。という推測の域をでないコメントで記事が締めくくられている。しかし確かにほかに説明のつかない、偶然にしては出来すぎた事象だ。「これは地球やばいよ、マジで終わっただろ」言葉がちゃちだが、スグルはいつになく深刻な表情を浮かべる。確かに言う通りだ。身体が溶けるってなんだ、どうしてそんなことが起こるんだ、ガセネタにしては不謹慎すぎるだろ。スマートフォンでほかにネット記事を探しても「身体が溶ける」ことに関して確かな情報が出てくることはない。代わりにSNSでは隕石にまつわるつぶやきがどんどんと増えていく。「隕石じゃなくてUFOだったんだろ、宇宙人の仕業だよ」「 早く空港封鎖しろ」「海外行ったやつは絶対帰ってくるな」「隕石の電磁波の影響かもしれない」「この嘘バズりすぎじゃね」 僕は「本当かどうか分からないけど、嘘にしては異様な広がりだね」スグルは横に首を振る。「疑っているより身の安全を考えた方がいいぜ、日本も大変なことになる」帰りの電車の中でも隣の人のスマホをちらと覗けば皆隕石のことを調べている。家に着いてテレビをつければ総理大臣が疫病に対する日本の対応方針について記者陣に問い詰められている。「現時点では事実確認を行っているところであり、詳細が分かり次第直ちにお知らせしたい。いずれにせよ国民の皆様には落ち着いた行動を心がけていただきたい。」  次の日、スーパーやコンビニに行っても殆どの飲食料が消える事態となった。地元の親からも連絡が来る「一度実家に帰ってきては」「日本ならどこにいても一緒でしょ、お母さんもあまり気にしすぎないようにね」
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!