曇天の霹靂

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 ネットではある動画が一日で100億再生という異例の再生回数をたたき出した。それは隕石が落ちたと思われる現地からの映像と言われており、現地民と思われる人が手振れの激しい映像の中で必死に分からない言語を喋っている、部屋の中で撮っているようであるが、ぐるっと映像の視界がかわると一台のベッドが映し出された。そのベッドは謎の液体で濡れきっており、木の床まで赤色の混じったゼリー状の液体がゆっくり滴っていた。およそ30秒の動画中そのベッドの様子が映し出されたのは4秒程度。2メートルくらい離れたところからの映像で、一体ベッド上で何が起こっているのかは分からない。コメント欄も様々な言語が散らかっていたが、大体が同じことを叫んでいるのだろう、とにかく僕らは行くこともできない異国の疫病らしきものの片鱗を、ネットを介して覗くことしかできず、怯えて過ごすほかなかった。  他国への感染の広がりが、これも真偽が分らぬままネットで広がっていった。その前に行われた緊急国際会議では他国への人身移動のシャットダウンが確認され、アフリカ内で問題を食い止め解決する方向性を打ち出したばかりであった。それにより日本内では外出禁止等の措置は取られることなく、うちの大学でも「任意開講」という聞きなれない措置を取り出した。講義は行うものの、身の安全のための自主的な欠席は単位取得には影響を及ぼさないとのこと。  僕は真偽の分からない話のために部屋に籠るのもできなかったので、大学にはいつも通りに通った。スグルも「問題を究明しないと日本がヤバイ」という使命感に駆られて大学に来ていた。果たしてその行動と目的が一致しているかは分からない。     
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