曇天の霹靂

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 「発症したていう確かな情報は見つかったのか」「いや、どこにも落ちてない」「まあ姿諸共消えちゃうんだからな、証拠なんて見つからないのかもしれない」「それにしても決定的なものがなさすぎるだろ」「そもそも、この病気、本当にあるかどうか分からないし」「未だにそんなこと言ってるのかよ」スグルは半ば呆れたように、そしてイライラしたようにつぶやいた。大学構内は普段より心なしか人気がなかった。この閑散とした食堂の一角で僕らはだらだらとするのが1学年の頃からの日課だった。しかし周りの雰囲気も、僕らの間にもいつになくひんやりとした空気が漂っていた。スグルは何かに焦りを感じているようにも思えた。「三上さん…」「え?」「三上さんのうわさが流れている」  スグルによると、三上さんの父親があの疫病にかかって消えたという噂が彼のバイト先で広がっているらしい。それで三上さんはここ最近バイト先に現れていないそうだ。三上さんは元々ほかの職員の人たちからあまり好かれていなかったからそんな噂話が職員によってまかれたのではと推測しているようだ。スグル曰く、これは女の妬みだって、わからないが。  「三上さんを助けたい」「スグルはどうする気なんだ」「三上さんに会って話を聞く。今はそれしかできない」「さすがに日本で発症するなんて、嘘に決まってるだろ。隕石が落ちたのはアフリカだろ」「そりゃそうだ、嘘に決まってる、でもそれを証明するものも今はなにもない」「しかしどうやって会うんだ」  さすがスグルは考えるよりも行動力に長けた男、三上さんの連絡先をすでに入手しているのであった。そして驚くことに彼女からはすぐに返信が来た。「ありがとうスグル君、今病院にいて、これから帰るとこ、もしこれからでよければ時間あるよ」意外とこの男の行動は侮れない。「その病院ならここから1時間もあれば着くかもしれない。」スグルに引っ張られるように僕は病院に向かった。     
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