曇天の霹靂

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 空には油絵具のような灰色が一面に広がっていた。肩にかかる厚みのある黒髪に、澄んだ紺色のセーターを羽織る彼女が三上さんのようだ。彼女は病院の屋上のベンチに腰かけてペットボトルのホットティーを飲んでいた。  「時間くれて、ありがとうね。いろいろ大変なのに」スグルがいつになく丁寧なあいさつをした。三上さんは弱々しく微笑んで首を振った。「バイト先で職員の人たちに変な噂話を流されて困ってると思って。それに僕らあの話の謎を解決したいんだ」それを聞いた三上さんは伏し目がちになって言った。「お父さんが消えたのは本当なの」僕らはぎょっとした。「でもあれに感染したわけじゃないよ、仕事で海外に行ってて、疫病の件で空港が遮断されて日本に帰ってこれなくなった。最初は毎日電話で連絡とってたんだけど、でも少し前から連絡が全然取れなくなっちゃって、ほかの人に話したら、それが間違ってみんなに伝わっちゃって、お父さんが感染したって言われたんだと思う」なるほど、噂話にも根が無いというわけでもなかったのか。しかし日本に帰ってこれないだなんて、三上さんもさぞ心細いだろう。     
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