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登るときは息がきれて膝が笑った石段も下りは楽だ。
カサカサと踏みしめる落ち葉の音も妙に軽くて、ふと気付いてリエの持つカバンに手を伸ばす。
「それ、貸せよ」
「軽いし大丈夫」
「いいから」
「何、下りはずいぶん余裕なんだね」
ふふふと笑いながら渡されたそれは確かに軽い。
中身は掃除に使って空になったペットボトルと蝋燭や線香だけだから当たり前だ。
ひょいと肩に担げばリエが見上げてくる。
「次に来る時は最初っからお水入りのカバン持ってもらうからね」
「次?」
「そう、次。来年も再来年もそのあともずっと。・・・一緒に来てくれるでしょ?」
『ずっと』
その言葉に知らず知らずのうちに笑みが浮かぶのが分かる。
『ずっと』
二人で来よう、翔吾に会いに。
『ずっと』
三人で会おう、あの高校生の頃みたいに。
翔吾とリエと俺と。
三人で会おう。
あのオレンジの花が咲くあの場所でーーー。
【おわり】
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