16歳 秋(1)

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 女にしては背の高いその姿が完全に見えなくなって、俺は一度立ち上がってた席にドカッと座りなおした。  ほんの少しのやりとりだったけど教室の中にはもう誰もいなくなってる。 「何なんだよ、あれ」  ボソッとつぶやいたら、やっぱりその背中が消えた方を見てた鈴木はふーっと大きく息を吐いた。 「菜々子先輩、ホント焦ってるなあ」 「焦ってる?」 「そう。ほら、白石先輩や池田先輩があれだけの記録残したでしょ。名前が上がっちゃった部を引き継ぐのは大変みたいでさ。どうしても前部長の白石先輩と比べられるし、しかも菜々子先輩は初めての女子部長だし」   「んなこと言っても陸上は個人競技だろうが。記録とか成績とか部長の統率だけでどうこうなるもんじゃねえじゃん」 「そうだけど『部』として期待されることは大きいから、どうしても気負っちゃうみたい」 「・・・で、運動神経よさそうな奴探して勧誘してると?」
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