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「そ。今までもいろんな人に声かけててさ、他の部からでも引き抜こうとするから結構クレームも出てる」
ああ、だから周りには聞こえないようにだったのか。
「でも、だからってあんたみたいなのにまで声かけるなんてね」
あんたみたいなの、ってますます酷くなった言われように俺は苦笑する。
鈴木は、浩介曰くの「心を入れ替える前の俺」のことは思いきり敬遠する側の人種だった。しかも、あの騒ぎの時には「最低っ」て叫ばれたくらいだから、たった2カ月やそこらで格上げされるわけはない。
だいたい、なんで今こうして普通に話してるかわかんねえし。
「で?」
なんとなく帰りそびれてる俺を、話しながらも着々と部活に行く準備をしていた鈴木が手を止めて見る。
「で・・・って、何」
「あんた、まさか菜々子先輩の話にのるんじゃないでしょうね?」
「・・・んなことしねえよ」
「絶対ダメよ。引退したっていっても、池田先輩は多分推薦で早くに進路決まるはずで、そうしたら部の練習にもまた参加するんだから」
「わかってる」
「それならいい」
俺の返事を確かめて、鈴木は教室を出て行った。
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