16歳 秋(1)

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 それから女部長はちょくちょく俺たちのクラスにやってきた。  一応は鈴木に用を言いつけるといった形だったけど、ついでのようなふりをして俺に声を掛けていく。  あまりのしつこさに、「俺を陸上部に」なんてそんな話が美紅やあいつの耳に入ったらとちょっと気になってたけど、やっぱりまわりに人がいるときは勧誘っぽい話はしなくて、それだけは良かった。  ただ。 「なあ、隆也。あの2年女子、おまえに絶対気があるぜ」  なんて言う浩介を筆頭にクラスの奴らにはへんな誤解はされちまったけど。  そんなこんなで、断り続け、逃げ続け、鈴木もいろいろ俺の悪口(のようなこと)を言い続けて、やっと諦めたのは10月に入った頃だった。  鈴木が言うには、10月の第3週には運動部の新人戦があるらしい。  それなのに第1週には中間試験、第2週に文化祭と学校の行事も目白押し。必然的に練習時間は減るから、勧誘なんかしてるヒマがあったらその限られた時間は練習に集中しろと顧問に怒られたということだ。  というのは多分表向きの理由。  あの事件を知ってる顧問は女部長が勧誘しようとしてるのが俺だとわかった瞬間、速攻却下したはずだ。
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