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どことなく身構えていた細目が、
手と一緒に出された物に釘付けになった。
緑色のリボンを巻かれた、クッキーボックス。
「横宮さんからは、何かありました?」
「え。…あー」
「なかったんですか?」
「いや、そういうわけじゃ…」
歯切れも悪く、狐さんの手が卓上の赤いマフラーを引き寄せてきゅっと握る。
「…っていうか、なんでいつ会えるかもわかんないわたしにクッキーなの」
「狐さんのご自宅の様子知りませんし。
横宮さんに預ければ大丈夫かなって…でも、今日会えましたから。さっ、お食べ?」
すいと箱を差し出せば、私の物言いに呆れ顔の狐さんがそれでも無言で引き寄せた。
リボンと蓋を取って、ひとつを口に入れてくれる。
「これ手作り?」
「ええ、まあ」
「へぇー…」
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