4人が本棚に入れています
本棚に追加
/74ページ
前章
カーテンを開けると、雪景色だった。
「……なんで?」
呟くと、窓硝子が更に曇った。
昨夜の空は、雪のひとひらも落としそうになかったというのに。
あの、触れられそうなほど凍てついた夜気のせいだろうか。
昨晩は早く眠ったから、それから今朝までにここまで降り積もったのかもしれない。
いや、だとしても。
「………」
雪って…この時期にこんなに降るものだったっけ?
そっと、壁のカレンダーに眼を当てる。
年も明けない12月、街中にはまだ聖夜にまつわる飾り物がそこかしこに見てとれた。
その中で雪が降るなんて、少なくとも私には初めての経験だ。
一瞬、ホワイトクリスマスという素敵な文句が浮かんでくる。
けれどそのロマンティックな名称は、再び外を見た私の中でどさどさと雪に埋もれていった。
なんだか緊急ニュースにでもなりそうな光景だ。
この積雪量、“ホワイト” の限度を超えている。
最初のコメントを投稿しよう!