<第6章>@タカヒト

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<第6章>@タカヒト

クリスマスイブの前日、23日に タカヒトはひろこと会う約束をしていた。 年末にしようと言っていた入籍は、 結局会社の繁忙期が終わってから、と言うことで 4月に延びた為、二人はまだお互い独身同士である。 だが、両家公認にはなったので 泊まりのデートも 割りと頻繁にするようになっていた。 普段はタカヒトの自宅に泊まる事が多いが、 今日はせっかくなので、 ずいぶん前からシティホテルを予約している。 軽いディナーのあと、 二人は川沿いのホテルにチェックインした。 いつもなら、部屋に入ったらすぐに押し倒すタカヒトも 今日は特別な夜だから・・・と、ぐっと我慢している。 クリスマスだし、ムードは大切だ。 荷物を置いた後 ひろこさんがタカヒトに、 ネックウォーマーをプレゼントしてくれた時 彼はリップの事を思い出した。 「ひろこさん、これ俺から。」 手のひらサイズのショッパーに入ったプレゼントを 彼女に手渡すと、 ひろこは「おおっ。」と驚いた声を出した。 「エスティローダーの婚活リップやん!」 「・・・・・そうなの?」 トオルに言われるまま、 エスティ何とかの、クリスタルシアー何とかを買ったのだ。 彼に化粧品の事など、分かるはずもなかった。 「・・・その顔は、トオルくんの入れ知恵ね?」 ひろこも慣れたもので、 彼の軍師のことはお見通しである。 気恥ずかしくてタカヒトが黙っていると 彼女は包装を開けた。 「すごい!ちゃんとHIROKOって入ってる!」 お見通しだからと言って、 嬉しくないわけではない、らしい。 「ありがとう。」 ひろこは嬉しそうな声で、タカヒトに言った。
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