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『審判雛五段』にかけられた後、
行方をくらました王子の心情を慮り、あの時のマキシリュは感情的になっていた。
王子が自分に何も告げず、一人でゴービーッシュ城を出て行った事実についても、かなりのショックを受けていたのだ。
「どーゆーつもりだ、サファ! 王子の不逞を王のお耳に入れ、王子を城払いに追いこむなんてさ!」
「しょーがないじゃん! 王子たちはあたしらの住処に不法侵入して来たんだからっ。
だいいち、王にチクったのはあたしじゃないよっ。フライトさんだもん!」
「フライトさんに黙っててもらうようお願いすれば良かったんだっ。
王子をお守りするのが俺たちの絶対的使命のはずだろ!?」
「王子王子うるさいってば! マキがこんなに無神経だとは思わなかった!
ちょっとはあたしの気持ち考えてくれたっていいでしょっ。あたしはあんな獣たちに裸を見られたんだよっ!」
「けだも……!? サファッ、王子に対して何てこと言うんだよ!?」
「ああ〜! もう、うるさいってば!
そんなに王子が大事なら、魔女に人形にしてもらって一生王子のコートのふところにでも棲みついてればいいんだ!」
サファイアは、恨めしそうな顔でマキシリュをねめつけた。
「なんだよ、それ……!?」
「知らないっっ」
口を一文字にむすんで泣きべそになっていくサファイアを前にして、
うら若き乙女が受けた心の傷に、マキシリュはこの時初めて気が付いた。
だが、今さらどう声をかければ良いのか分からずにうろたえ、しどろもどろになっていた。
「サファ。その……あれだ……せっかくだから、お前はゆっくり休んでろよっ。
ほら、こんな機会めったにないし……」
「なにそれ!? なにそれ!? 休暇っっ!?」
「と、とにかく俺だけでも王子の元に……
じゃ、じゃあなっ!」
マキシリュはサファイアから視線をそらすと、逃げ出すように急ぎ足で階段を駆け上がって行った。
遠のいて行くマキシリュの背中に向けて、サファイアは崖下からありったけの声をふりしぼった。
「マキのバカァァァ――――ッッ!!」
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