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私の前に一個のラムネがある。
緑のセロファンに包まれた ありふれたそれは、学校からの帰りのバスで 隣り合ったおばちゃんにもらったもの。
どこにでも売っていそうなものなのだけれど…。
「そのラムネね、口に入れて、溶け終わる前に願い事を頭の中で唱えると叶うのよ!」
おばちゃんが私に囁いた。
ビックリして、おばちゃんの顔を見ると ちょっと笑って「結構 溶けるの早いから気をつけてね~」と言ってバスを降りて行ってしまった。
何となく制服のポケットに入れて帰り、今 私の目の前に。
やっぱり、からかわれたんだよね…。
願い事が叶うラムネなんて…ね。
でも…もし…もしだよ…本当だったら?
億万長者? テストで100点? 素敵な彼氏?
欲張り過ぎかな?
ラムネ一個には、荷が重過ぎ?
ラムネ一個のパワーは、いかに?
私はゆっくりとセロファンを開けるとラムネを口に入れた。
《ネコのネネの言葉が分かるようになりますように!》
おばちゃんが言っていた通り、ラムネは アッと言う間に溶けてなくなった。
味は普通だった…。
やっぱりからかわれたのかな。
ラムネ一個 得したって思っておこう。
学校の宿題、塾の宿題を片付け、合間に友達とLINEして、「ご飯だよ~!」というお母さんの声で下に降りる。
「ネネにもご飯あげて」
ネコ缶を開けていつもの エサボールに入れるとネネが寄ってきた。
【また そのご飯か~。たまにはゴージャスなネコ缶が食べたいんですけど。】
「えっ?!」
【えっ?!】
「…。」
【…。】
億万長者にしとけば良かった。それか100点。
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